ここで機材の話を少し
前回の記事で、「次回はキックの作成」などと書いたが、その前に制作環境の話をしておいた方が、いろいろと都合が良かろうと。
音源制作は、DAW(Digital Audio Workstation)を使用するわけだが、その構成はこんな感じ。
- iMac 27inch (3.4GHz, Memory 24GB, Strage 1TB Fusion Drive)
- UAD-2 Satellite Thunderbolt OCTO CORE
- Logic Pro X
- Motu 828MkII x 2
- Mackie 1604 VLZ4
- dbx 1066
- KORG TR-Rack
- Lexicon MPX-1
- Lexicon MPX-100
アウトボード等は他にも多少あるが、メインで使用しているのは上記。アナログ機材を結構使っているので、正確にはDAWとは言えないのかも知れない。
Logicは、Ver 1.5.7から、もうかれこれ20年以上の付き合いである。こういった制作ツールは、操作が複雑だということもあり、一度慣れると、他に乗り換えるのが大変である。
上記構成において、Logic Pro X上で直接2MIXせずに、16chパラアウトで2基のMOTU 828mkIIに送る。2基のMOTU 828mkIIの8chx2=16chの出力をMackie 1604-VLZ4の各フェーダに送り、1604-VLZ4o上で2MIXしたものをLogicPro Xでステレオ録音する、という流れになっている。
つまり、Logic Pro XでMIXをマルチトラック再生しながら、それを外部アナログミキサーで2MIXしたものをLogic Pro Xで録音するというわけ。
Logic Pro X上で直接2MIXを作ってしまうのが普通かもしれないが、自分的には、アナログの質感という意味でこのやり方が気に入っている。
アナログミキサーは、特性が完全にリニアではないため、各メーカーでそれぞれ音質に特徴があり、Mackieは、アメリカ的な明るいシャキシャキした音質になる傾向がある(らしい、他のミキサーを使ったこと無いので)。私としては、この明るめの音質が好きなのだな。また、1604-VLZ4は、EQの効きもなかなか良くて、最後の味付けに貢献している。
この「最後の味付け」に関していえば、これがDTMに外部ミキサーを使う大きなメリットの一つといえると思う。例えば、Logic Pro X上であるパートがFull状態になっていても、ミキサーにてさらに上げることができる、など、Logic Pro X上で制作したMIXに対してもう一味加えたいときに、非常に便利なのである。
あと、これは本筋の話ではないが、アナログミキサーが持つ、チャンネル間のクロストークも、実はマルチトラックの音を馴染ませるのに有効かな、と思っている。
…というわけで、次はキックの作成について。
とりあえず全体の流れ
うむ、前回の記事から半年以上経ってしまったな(Mac話を除く)。
毎回ごちゃごちゃ書こうとするから、つい億劫になって更新が空いてしまう…ので、ネタを小出しにして少しずつ書いていこうと思う。
…
まずは、私の場合のライブ音源作成の全体の流れを。
作曲とかそういった方面はひとまず置いておいて、次のような流れで作っている。
まずはリズム隊を作成する。キック→スネア→ハイハット→ベース→その他パーカッション→リズム隊全体まとめ、といった流れになる。
リズム隊が一通り出来上がると、和音系、単音のオブリガード系、ノイズ系、などを作る。ここらへんは順不同であるが、和音系を先に作って空間を埋めていくことが多い。ディレイなどDAW内で完結できるエフェクト系も同時にかけていく。
PSYDOLLの場合、極限まで無駄を削ぎ落とした音、ではなく、空間に音を色々と詰めていくやり方が好きなのだ。誰かが「おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンド」と評していたが、言い得て妙である。
音が一通り揃うと、バランスを再調整し、ミキサーのチャンネル毎にリバーブを掛けていく。リバーブは、アウトボードのマシン(Lexicon MPX-1, MPX-100)を使う。昨今では、DAWのリバーブ(Plugin)も相当性能がいいので、それでもいい気もするが、ここは趣味である。また、ミキサー内部のクロストークがいい方に効いてくるのを期待している、ということもある。
リバーブまで終わると、ミキサーを介して2MIXを作成する。このとき、軽くコンプを掛ける。最後に、この2MIXをライブ音源用にマスタリングして、完成、となる。
忘れていた。ここで完成ではなくて、ライブ音源用のマスタリングを完成した音源を、スタジオで、可能な限りライブハウスに近い環境で再生し、実際にギター、ボーカルを入れて演奏してみて、いい感じに仕上がっているか確認する。気になる点がある場合は、次のスタジオの機会までに修正して、再度確認する。
では、次回は、リズム隊の作成その1、キックの作成、である。
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マルチチャンネルとステレオアウト
2chすなわちステレオアウトの音源の音作りについて書こうと思っていたが、その前にまず、なぜステレオアウトなのかについて。
ステージで音源鳴らしてライブ演奏する方法として、
- ステージにマルチチャンネル出力可能な機材を持ち込んで、各チャンネルを直接PA卓に接続
- ステージにマルチチャンネル出力可能な機材とミキサーとを持ち込んで、各チャンネルをミキサーにて自前でステレオアウトに落としてPA卓に接続
- 予めステレオアウトで作成した音源を直接にPA卓に接続
の3つの方法があると思われる。
これらの方法のうち、1と2は、クリック音を別途出力可能で(まあ、それなりのシステムが必要だが)、ライブハウスに合わせた音作りが可能である利点がある。
一方で、1と2は、マルチチャンネル出力可能なレコーダ、もしくは、PC+マルチチャンネル出力可能なオーディオI/Fが必要となり、機材の運搬、ステージでのセッティングにおける負荷が大きい。特に2は、ミキサーを持ち込む必要があり、それ用のスタッフがいない限り、困難が伴うものと思われる。
また、1と2の場合、PCを用いると、トラブルの種になり兼ねない。実際に、ステージ上でPCがハングアップして演奏が中断される、という事態が発生したという話も時折、耳にする。このテのトラブルは、特に海外のライブでは致命傷になりかねない。
PSYDOLLでは、ステージ上でのトラブルは可能な限り避けたい、という点と、運搬その他の準備を必要最小限にしたい、という観点から(これは主にツアーに向けた視点であるともいえる)、ステレオアウト一択だった。
これらを勘案して、トラブルフリーと運搬性を優先した結果、音源はステレオアウトとし、R-1を再生機とする構成に決定したわけである。
ところで、ステレオアウトで音源を再生するとなると、現場に合わせた音作りというのが非常に難しいという問題がある。
マルチチャンネルの場合、キック、スネア、ベース、その他、など分けてPA卓に送ることができ(上記1の場合)、PAエンジニアにしっかりお願いしておけば、ステージ上で思った音が出せるだろう(ただし、リハにそれなりの時間が必要になる)。これは上記2も同様。
一方で、ステレオアウトの場合、キックやベース、スネアといった音を個別に調整するのは、極めて困難である。「キックのアタックの帯域を少し上げて」とか「低域がブーミーになりすぎるので、低域カット」くらいは可能だけれど、2MIXだと意図しない音にまで影響が及ぶので、PA卓での調整には限界がある。
如何にしてステレオアウトでステージ映えし、且つ汎用性の高い音を作るか。この点に腐心するわけである。
というわけで、次は自分流音源制作の各論について、書いていこうと思う。
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私はPSYDOLLというバンドと、もう一つ別のバンドをやっているわけだが、このブログでは、主にPSYDOLLのことについて書いていこうと思う。
PSYDOLLは、2018年9月時点で、女性Vo+Keyと、男性G(私です)の2人組ユニットであり、活動開始してから早20年以上を経過している。年齢のことは不問としていただきたい。途中、デジタルパーカッションの人が在籍していたが(それでも10年位は在籍してくれていた)、現在は、結成当初のメンバーによる2人組である。10数年ほど前から、毎年1度程度、海外(主にUK)でのツアーを敢行している。そんなバンドである。
PSYDOLLは、その結成当時から音源をバックに演奏する所謂打ち込みバンドであった。
当初は、シーケンスソフトでMIDIデータを作成し、それをステージに持ち込んだMIDI音源で再生していた。シーケンスソフトはLogic 2.5.7、MIDIデータの再生は、フロッピーディスクに入れたMIDIデータを再生するYAMAHA データファイラ MDF2、MIDI音源はKORG TR-Rack である。ちなみに、このTR-Rack は、未だ現役で、自宅のラックに収まっている。
当時のLogic(というか、シーケンスソフトの大半)は、オーディオデータの録音機能が無く、また、それ(録音)をするためには、結構な予算が必要であった。なので、必然的に、MIDI音源をステージに持ち込む必要があった。
Logic は、確かバージョン3.0 あたりからオーディオ録音に対応し始めたと記憶している。私自身は、バージョン4.0 くらいから録音を始め、録音したライブの音源トラックを、DAT に記録して、それをステージにて再生していた。
ただ、DAT は、当時において既にオーディオメディアとしては終焉を迎えつつあり、また、再生にはハードウェア機構が絡むため、ステージ上のトラブルも怖い。
そのため、試しに練習において、録音した打ち込み音源を、ノートPC にて再生していた。このとき、スタジオでの練習の際に、PCで音源を再生してたところ、PCのトラブルで再生が途中で停止してしまう事態が、2回くらい発生した。
そこで、「PCは当てにならない」、ということで、可能な限りトラブルフリーの音源再生装置を探すことに相成るわけである。
単体で動作可能なオーディオデータの再生専用装置となると、音楽鑑賞用の装置になるわけだが、これは、iPodなどを除き小型のものが無いのと、高価であることから除外。音質的にも、ライブ音源には向いていないと思われた。なお、iPodは当時既に発売されていたが、何故か候補に上がってこなかった。
次に考えたのが、録音機材。アウトドアで録音する目的に適した、ステレオマイク内蔵のアレである。録音機材なら、当然、録音した音を確認するためのモニタ用のオーディオ出力を持っているだろう。しかしながら、これも当時はプロ用機材的なものが多く、高価で、大きさも、それなりにあった。
そんな中で見つけたのがこれである。
Edirol R-1。
ステレオマイク内蔵、2行のLEDディスプレイを持ち、主な操作ボタンなどは表面パネルに配置されている。CFメモリを用い、録音、再生が可能。価格は確か4万円台(これでも当時の機器としては安価な方だった記憶がある)。
当時は、本当にこれしか選択の余地が無い、という感じでR-1を購入したのだが、2018年の今となっては、これ以上に使い勝手が良い機材は見当たらず、結果的に大正解だったということができる。
もちろん、現在は、ステレオマイク内蔵し、高音質且つ低価格の録音機器は、多く出回っている。そんな中で、R-1がなぜ好適な選択かというと、操作面が広く、各操作ボタンの操作が容易だからである。
R-1の後継機種のR-5(もう十分古いが)、更にその後継機種のR-9、また、他メーカーの同等機種は、小型化している反面、ぱっと見での操作がやり難く感じる。この「ぱっと見での操作」がライブでは重要になってくる。特に海外では、ワケの分からん環境で演奏することも多いので、「操作の容易さ」は重要である。なお、操作専用のオペレータが演奏者とは別に存在する場合は、また話が別ではある。
R-1の最大の欠点は、CFメモリを使う点である。R-1自体古い機種なので、最近のCFメモリでは認識されないのである。
次は、このR-1で再生するための、ライブ用の2ch音源を如何にして制作するか、の自分なりのやり方を書いてみたいと思う。
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