自分流!DTMによるライブ音源作成!

自分のやっているバンド「PSYDOLL」のライブ用音源作成について、と、PSYDOLLに関すること。

最終工程:マスタリング処理

さて、オケの2Mix処理が完了すると、次は、最終仕上げであるマスタリング処理を実行するわけである。

ここで、参考までに、2Mix直後の音源は、こんな感じである。
2MIX

マスタリング処理は、CD制作などでは収録各曲のレベル合わせ(音圧調整)、音質調整から、曲間設定、PQ打ちなど、広範な処理を含むようだが、ここでは、マスタリング処理を、「ライブステージで使えるように、複数曲のレベルを適切に揃える」処理であるとする。

2Mix は、基本的には、その曲のみの処理であり、複数曲の間でのバランスなどは考えないことが多いと思う。また、ライブで演奏する複数曲(CD収録するための曲でも同じだが)は、一般的には、必ずしも全曲一気に2Mixまで処理するわけではなく、ある曲の2Mix処理と別の曲の2Mix処理とが日程を空けて実施されたり、別の2Mix過程を経て制作されたり、あるいは、新たに2Mixした曲と、過去(例えば1年前など)に2MIxした曲とをワンステージで演奏する場合も、往々にして、ある。

このような場合、各曲で音質や音量が異なってしまうおそれがあり、そのままライブのバッキングトラックとして用いることは好ましくないと考える。

そのため、ワンステージで用いる各曲のバッキングトラックに対するマスタリング処理は、必須である。

もっとも、バッキングトラックを2Mixではなく、楽器パートごとの複数チャネルに分けて演奏させる場合は、この限りではないが。

実際の流れがどうなるか、というと、まず2Mixした各曲のデータを、それぞれDAWのトラックに割り当てる。作業対象の曲が割り当てられたトラックをソロ状態にして、調整を行うことになる。

調整は、色々な方法があると思うが、私は、シンプルに、EQ→コンプの流れでマスタリング処理を行っている。

まず、EQについて。

2Mixの状態で問題ないと思っていても、改めて聴くと、メリハリというか、やや精彩を欠いた状態になってしまっている。これは単に私の腕が悪いだけなのかも知れないが、特にキックは、2Mixの段階でEQによりアタック辺りの周波数を突出させているわけだが、全体で聴くと、やはり少々物足りない、と感じる場合が多い。これは、2Mix時のレベル上限の制限に関連するのかも知れない。

また、超低域、超高域の成分は、2Mix時に各トラックにおいてカットしているが、2Mix時のアナログ工程においてノイズ(特に超低域)が混入している可能性があるため、ここでも念の為、カットしておく。ライブ音源では、CDなどによる観賞用の音源と異なり、繊細な表現は求められないと考えられる(特にロックの場合)。また、超低域は、音として認識され難いにも関わらず、大きなエネルギーを持つため、レベル調整の妨げとなる。

さらに、キックのアタック辺りの周波数(例えば2.50kHz 付近)にピークを作り、キックを際立たせる。また、中低域でごちゃついた感じがする場合には、500Hz~1kHz辺りに、dipを作る、など。

2Mixにおいては、自分の場合、スネアが埋もれてしまうことが結構ある。この場合、上記のキックのアタックを上げる処理で、スネアも際立つことが多い。場合によっては、キックよりも上の周波数(例えば3.5kHz付近)を少し持ち上げると、スネアが通るようになることがある。ただし、他の高域の音も持ち上がり喧しくなることもあるので、ケース・バイ・ケースである。

EQの調整はこれくらいかな。

次に、コンプを掛けるのだが、自分の場合はテープシミュレータ、具体的には、Ampex ATR-102のエミュレータを使っている。これは、なかなかいい感じのEQが内蔵されているのと、テープ速度を最も遅い速度に設定することで、適度に美味しい音域が強調されると共に、音に「ざらつき感」が加味され、立った音になるように感じている。入力のレベルと出力のレベルを適宜設定する。自分は、入力、出力とも、過大にならないように設定している。

以上でプラグイン系の設定は完了。この状態でその曲のトラックを選択してバウンスすることで、プラグインの設定が反映された曲データが生成されるわけだが、ここで非常に大切な処理が入る。

レベル設定である。

具体的には、ライブで使う複数の曲のレベルを揃える処理となる。CD制作の際のマスタリングでは、ここで0dBをMAXにして音圧を持ち上げていくと思う。

しかしながら、ライブ音源でこれを行うと、何かと問題が生じる。例えば、ライブハウスのPA側で音量調整、特にモニタの音量調整がやり難くなる(らしい)。

PSYDOLLの場合、2回目の海外のライブにおいて、CD制作時の容量で0dBをMAXとしてマスタリングした音源を用いていたのだが、あろうことか、ライブ中にモニタスピーカを飛ばしてしまった。これは想像だが、音源の最大レベルが0dBであり、且つ、音圧を最大限上げる処理を行ったため、モニタの音量調整にマージンが少なく、こちら(PSYDOLL側)の「モニタを大きくしてくれ」の要求に応えようとしてフェーダを上げてしまった結果であったのではないか、と考えている。

そのため、現在では、曲のレベルを、RMSが概ね-20dBになるようにフェーダ調整している。-20dBはずいぶん低いように感じるが、これは、多くのPAコンソールにおける各トラックのPadボタンが-20dBであるので、曲データのレベルをそれに合わせておけば、コンソールにおいて調整が楽なのではないかと考え、そのように設定してる。

事実、この設定にしてからは、特にモニタに関しては、問題が発生したことは(ほとんど)無い。

また、-20dBという設定は、再生機側にも都合が良い。
つまり、データの突出したピークをコンプなどで潰した上でRMSが-20dBになるように調整することで、再生機側のVolをMAXにしても再生機の出力音が歪まないのである。これはすなわち、リハおよびライブ本番を通じて、再生機のVolをMAX値に固定しておける、ということを意味する。

出力レベルをデジタル値などで表示するタイプの再生機では、これはさほど問題になる点ではないと思うが、アナログ的な「つまみ」で音量調整を行うタイプの再生機では、重要である。特に、PSYDOLLで使用しているEDIROL R-1は、Volつまみに目盛りも付いていないタイプなので、リハと本番とで同じ音量を設定する操作が極めて容易である。単にVolを最大に振り切る位置に固定しておけば良いのだから。

上記2Mix音源をマスタリングした結果は、このようになる。RMSを-20dBに設定しているので、音量は2Mix音源より小さいが、キックのアタック感などは、音量差の割には2Mixとの差が小さいと思う。

Mastering処理後

ライブで使用する各曲のデータを、それぞれ上記のように調整してバウンスを実行し、バウンスされた各曲データのさわりを一通り聴いて、各曲で音量のバランスが取れているかを確認。問題なければ、それらの曲データを、ライブの曲順に並べて再生機のメモリにコピーして、完了である。問題があれば、上記のマスタリング処理のレベル設定あたりを再実行することになる。

以上のようにして制作した各曲のデータにより、ライブやツアーに臨むわけである。

 

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全体2Mix

前回で出来上がったBeat Track に対し、ウワモノを乗せて、最終的な2Mix を作る。

ここで、ウワモノは、Strings、Pad などの和音系、シンセなどのLead 系、あとはSFX 系などを指す。

ここらへんのMixは、定石通りという感じ。

和音系は、アナログ感を醸し出す感じのプリアンプ/EQ系のエフェクトを掛け、さらに、ステレオコーラス系のエフェクトを掛けてスペース感を出す。自分的には、Roland のDimension D(のアナログエミュレータ)が気に入ってよく使っている。ステレオ感を強調したい場合は、Eventide H3000 なども使う。もちろんエミュレータ

和音系は、さらに軽くコンプを掛けて音を安定させる。リバーブについては、ホール系など長めのものを多めに掛け、定位はあまり左右に振らない。コーラス系のエフェクトを掛けることで、定位がぼやけ、包み込むような感じとなっているので、定位はセンターから少しずらすくらいで良いと思われる。というか、少しずらしたくらいが、音の過剰な重なりを回避できる。そして、音量は抑えめに。ライブで和音系を出しすぎると、他の音(ギターやVo含む)が埋もれてしまって、訳が分からんようになる。「これでいいかな?」と思った音量から少し下げるくらいで丁度良いと思われる。

Lead系は、アレンジによるが、自分的には、あまりリバーブは掛けない。必要に応じて、少し音を荒らす系のエフェクトを掛けて際立たせる。アナログエミュレータ系のコンプ、プリアンプ、EQなどを適宜選択する。音量などは、和音系よりは出す。アレンジによっては、左右にオートパンさせて遊ぶ。SFX 系も同様である。

全体を通し、リバーブはアウトボード(Lexicon MPX-1/MPX-100)を使用、アナログミキサー上でリバーブ音をミックスしている。今どきなら、Logic 上でプラグインで掛けても良いのだろうけど、分かりやすさ、全体へのリバーブ音の混ざり具合とか、諸々のこだわりで、アウトボードを使用している。そのうちフルデジタルにするかも知れないが。
また、各チャネルにおいて、ミキサーのLow Cut スイッチは、Beat Track 以外は全てオン。Logic 上で低域はカットしているが、念の為。

以上の調整を行った各トラックを、2Mix してLogic 上で録音する。

このとき、トータルコンプなるものを掛ける。この場合、主たる目的は、2Mix録音時のピークアウトを回避するためなので、できるだけ軽く掛ける。アナログコンプ(dbx 1066 使用)による非直線的な効果も期待している。

こうして2Mix が完成したら、最後にマスタリング処理を行い、ステージ上で再生させる音源データが完成するわけである。

次回は、このマスタリング処理について。

 

 

 

 

Beat Track まとめ

前回までで、やっとKick, Snare, Hi-Hat, Bass まで終了し、今回は、これらを纏めてBeat Trackを作成するわけだ。

実際には、さらにメタルパーカッションや、ノイズ音源などが入ったりすることもあるが、いずれもイレギュラーな要素のため、ここでは割愛。

Beat Track 作成は、基本的には、上記のKick, Snare, Hi-Hat, Bass に対して2Mix を施す処理となる。具体的には、Bus トラックを1本作成し、作成したBus トラックにKick, Snare, Hi-Hat, Bass を出力して、2Mixする。

2Mix なので、各音源のバランスが重要となる。ライブにおいては、腹にくる音を十分出すと共に、ギターやキーボード、ヴォーカルの演奏に必要な刻みを明確に出す必要がある。

そのため、まずはKick の音量を決める。Kick 音はエネルギーが大きいため、最初に決めておかないと、後にレベルコントロールが困難になる。

次に、Kick を聴きながら、Snare の音量を調整する。Snare は、油断していると、全体を2Mix した際に埋もれてしまうので、大きめにする。必要なら、EQ も再調整する。例えば2KHz くらいにピークを作り、それでアタック感を強調する、など。

Hi-Hat は、PSYDOLLの場合はこれで曲のビートを把握している。そのため、少し大きいかな、くらいの音量とする。特に、轟音歪ギターが演奏で入る場合、Hi-Hat をある程度出しておかないと、ステージでビートを見失うことになること請け合い。

最後にBass 。Bass は、Kick+Snare+Hi-Hat に対して少し小さいかな、くらいの音量とする。当然だが、ライブハウスのPAシステムは、自宅で聴くより遥かに低音が出るので、自宅のシステムで十分なくらいに音量を上げてしまうと、いざライブのときにBass 出過ぎ、という事態になりかねない。もっとも、自宅でライブハウス並みに低域をモニタできるのであれば、この限りではないが。

自分の場合、レベルメータ表示でKick がフルになっている場合、Bass はレベルメータが3割程度の振れになるようにして、ちょうどよい感じになっている。

ここまでの過程で2Mix されたBeat Track は、こんな感じとなる。

Beat ALL

ここで、この2Mix に対して、さらにコンプを掛ける。また、必要に応じてEQ調整も施す。こんな感じである。

f:id:PSYDOLL:20190421044228p:plain

ここでは、コンプにUAD-2 のFairchild 670 を用い、ループのKick を強調する(と思う)プリセットを少しアレンジして適用している。Kick とBass がいい感じに分離し、且つ、適度に主張するようになり、グルーブ感が出るような気がしている。

EQ は、後の最終仕上げの段階で改めて調整するので、この段階では、軽めにかける。自分は、Kick のアタックや、Bass の低域がやや足りないと感じたときに、補助的に使用している。

このコンプやEQ にアナログ回路をシミュレートしたプラグインを用いることで、音量とは別の観点からBeat Track の存在感を強調することができるのではないか、と感じている。

上記の2Mix 音源に対してコンプ、EQ を掛けると、下記のリンクのようになる。

Beat ALL EQ Cmp

なお、Beat Track の2Mix を実行する際に、曲の構成によっては、Hi-Hat のTrack にコンプを掛けない方が良い場合がある。例えば、全体的にパワフルな曲の中に、Hi-Hat のみになる部分がある場合、コンプの掛け方次第では、その部分においてHi-Hat が無用に強調されてしまうことになる。このような場合、Hi-Hat のTrack にはコンプを掛けないようにすると良い。

Beat Track の2Mix が出来上がったら、次は、ストリングスやシンセなどの調整を行い、全体の2Mix 、さらに、全体の2Mix に対するマスタリング処理となるわけだが。

Bass の作成

次は、Bass トラックの作成となるわけだが…

前回の更新から恐ろしいことに1年近く経過しているな、何を書こうとしていたか、忘れてしまった。

というわけで、仕切り直し。

DTMでBassトラックを作成する場合、Bass音源はシンセ系とリアル系の2種類に大別されると思う。リアル系にフィルタ処理やエンベロープ処理を施す例もあるが、これはリアル系に分類する。

シンセ系では、これまた正弦波系、ノコギリ波系、矩形波形、その他系あたりの分類がいいか。自分の感覚としては、正弦波形は響きはあるが特にBassとして用いた場合、音程感が弱い印象、ノコギリ波系は、芯は太いが倍音系の制御にコツがいる印象、そして、矩形波系は、中抜け感があって、なんというかな、幅の広い音の印象。その他系は、様々なので、ここでは割愛。

リアル系は、要するに弦楽器としてのBass音源なわけだが、芯の太さやアタック感などは、シンセ系に対して優位であるように思う。

PSYDOLLの場合は、ギターがゴリゴリ入ってくるので、シンセ系ならノコギリ波系、もしくは、リアル系のBass音源をよく使う。

ノコギリ波系シンセでは、DOEPFER MS-404 が良かった。身体の芯に響くような存在感のあるベース音。歪ギターとの相性もいい。PSYDOLLの割と初期の頃は、MS-404の実機を所有していて、よく使っていた。

その後、なんやかやで実機のMS-404が使用不能になり、後述するリアル系のベース音源を使っていたのだが、MS-404のエミュレータが存在することを知り、早速入手。Eisenberg社の「Vier」という製品である。このVierは、4台のMS-404を並列に使用可能となっているもので、なかなか使い出があった。が、音は、やはり実機に軍配が上がる。自分のコントロールが悪いのかも知れないが。

そのうち、Eisenberg社がVierの販売を取り止め、また、自分でも、DAW用のMacを替えた際に手違いでVierのライセンスを失ってしまい、Vierの使用は取りやめとなった。

リアル系のベース音源としては、Logicシリーズに付属しているサンプラーEXS24がデフォルトで持っている音源「FingerBass」を使っている。正直、このFingerBassは高音質とはいい難いところがあるのだが、それがむしろ、完全にDTMではなく、また完全に生バンドではない味を出している、と思っている。

Bass音源は、生ベース由来であれば勿論のこと、シンセ系のBass音源であってもベースアンプ(当然エミュレータだが)を通す。こうすることで、原音に対してアンプ固有の倍音が発生し、上手く調整すれば、より存在感のあるBass音とすることができる。

実例は、例えばこんな感じになる。
なお、このときは、Bass音源として上述のVier を用いている。
また、最終的に用いるエフェクト群は、画像の通り。

f:id:PSYDOLL:20190421044248p:plain

まず、全てのエフェクト(アンプシミュレーター含む)を通さない、生のBass音は、こんな感じ。

Bass (No Effect)

これにアンプシミュレーターを通す。ここでは、Amplitude 4 のAmpeg BA500 というモデルのシミュレータを用いている。ベースアンプのコントロールは、ギターアンプとはかなり異なり、それなりに苦労している。

Bass Amp

次に、EQで超低域を減衰させ、150Hz辺りを少し持ち上げる。

Bass Amp EQ

最後に、Compressor で音を整える。ここでは、UAD-2 のPlugin "teletronix LA-2" を用いている。このCompressor は、内部で絶妙に歪が加わるらしく、通すだけで音が立ち、とても便利に使っている。

Bass Amp EQ Comp

とまあ、こんな感じでBassトラックの作成は一応の完了をみるわけである。

次回は、キック、スネア、ハイハット、ベースを合わせたビートパートの作成について。

 

Hi-Hat の作成

さて、お次はHi-Hat(以下ハット)トラックの作成である。

ここで、PSYDOLLの場合、L-Rの2chでオケを鳴らしているので、クリック音だとかビート専用の音を、各人がモニタできるように独立して出力することが難しい。

もちろん、簡易なミキサーを使うなどすれば、できないことはない。が、それではステージ機材が増えてしまうし、また、ワイヤレスなどのシステムも必要になってくる。ステージ上のトラブルを避けたい自分たちとしては、極力、ステージ上の構成はシンプルにまとめたい。

一方、PSYDOLLは、ギターがゴリゴリ自己主張するサウンドなので、基準となるビートはステージ上で明確に聴こえるようにしたい。

というわけで、ハットのサウンドは、音を際だたせるためにビットクラッシャーを掛け、さらに、後述するが、ハットの音量は、ビート隊の各音のバランスに対して若干大きいかな?くらい音量とする。音作り自体は、先に書いたスネアと同様となる。

ハット音源の生音は、例えばこんな感じである。

Hi-Hat (No Effect)

ビットクラッシャーを掛ける。

Hi-Hat (Bitcrusher)

そして、余分な低域をカット。

Hi-Hat (Low Cut)

これで、元のハットの音と比較して、かなり際立った感じになったと思う。

ハットの音作りに関してはこんな感じかな。

次はベースについて。

 

figma けいおん! 田井中律 制服ver.

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スネアの作成

今回は、スネアトラックの作成について。

ところで、私はずっと生のドラムがいるバンドをやってきたのと、所謂テクノサウンドの洗礼を受けていない。そのため、初期のPSYDOLLでは、リズム隊をできるだけ生に近付けようとしていた。具体的には、キックやスネア等に生に近い音源を用い、細かなニュアンスを出し、シンバルを入れ、タムによるfill in も積極的に取り入れる音作りをしていた。

そのころ、インダストリアル系で活動していた友人に、「デジタルなんだからデジタルでしかできない音にした方が良い」みたいなアドバイス(今となっては当然すぎるアドバイスだが)を受け、それもそうだ、と方針を転換、生っぽくない音を目指すことに。

具体的には、ドラム周りの各音源にできるだけ生っぽくない音を選び、シンバルクラッシュは廃止、タム回しも可能な限り用いない、といった感じ。特にシンバルクラッシュはデジタルに馴染まない印象があり、一切使わないことに決める。

そんなわけで、スネアの音源も、生っぽくなく、かつ、テクノでもないものを探す。結局、KORG 社のTR-Rack からサンプリングした音源を用いる。

その音源の生音は、こんな感じである。

Snare (No Effect)

このままでは例えばディストーションの効いたギターを被せたときに埋もれてしまう可能性が大である。そのため、ビットクラッシャーを若干かける。ビットクラッシャーは、Logic 付属のものを使用。ビットクラッシャーは、かけすぎるとノイズ音に近くなり逆に埋もれてしまう。そのため、私の場合はビットクラッシャーのパラメータのビットレート、サンプリングレートはデフォルト値のままとし、ゲインを多少上げる程度としている。

ビットクラッシャーをかけた状態のスネア音源の音は、こんな感じである。

Snare (Bitcrusher)

 音のざらつき感が増しているのが分かる。

これは、意外と超低域成分が出ているのと、高域も不要と思われる帯域まで出ている。そのため、イコライジングで超低域と超高域をカットする。さらに、痩せた音にならないよう、中低域を少し持ち上げる。この中低域は、スネアドラムの胴の鳴りの成分と思われる。

イコライジングした状態のスネア音源の音は、こんな感じである。

Snare (Bitcrusher+EQ)

 さらに、必要に応じてスネアにリバーブをかける。だいたいこんな感じ。

Snare (Bitcrusher+EQ+Reverb)

これで、 2MIX でのスネア音源の作成は完了である。

次は、ハイハット

 

Sonnox Oxford EQ Native

Sonnox Oxford EQ Native

 
KORG TRITON

KORG TRITON

 

 

 

キックの作成

さて、ペンディングになっていたキックトラックの作成について、書こうと思う。

打ち込み音源でも、特にエレクトロ系などでは、低域の響きを重視し、アタックを出さないキック音が多いように思う。つまり、音としてはっきり認識することは難しいが、腹にくる感じの、そういうキック音。

私の場合は、そういうキック音があまり好きではないのと、歪ギターが盛大に入る中でキックによるビートもはっきり聴かせたいため、キック音は、アタックを明確に出す方向で作成している。アタック+低域、という感じだ。

ところで、キック音を含めドラム、パーカッション系の音は、Native Instruments 社のBattery (現在はVer 4)を使用している。どうしてこれを選んだか、については、もうずいぶん前のことなのですっかり忘れてしまったが、現状では何ら不満がないので、特に他のプラグインに手を出そうとも思わない。

肝心の音源であるが、上記Battery 4 は膨大なライブラリが同梱されていて、それらから選ぶことも可能であるが、主には、ハードウェア機材であるKORG 社のTR-Rack からサンプリングした音源を用いている。

TR-Rack のドラム音源は、当時の他のハードウェア機材のドラム音源と比べて音の荒れ具合が絶妙であり、私としてはほぼ一目惚れの状態でこの機材を購入したのであった。

キックの生音は、こんな感じである。

Kick (No Effect)

このままでは、ギターや他の音も足したときにアタックがおそらく前に出てこないし、低域も不足している。なので、まず、低域の増強を図る。ここでは、UAD-2VOG(Voice Of God) というレゾナンス系のプラグインを用いる。こんな感じである。

Kick (VOG)

低域がかなり増強されいることが分かると思う。

これではアタックが出ないのと、超低域が野放しになっているのが気になるので、EQ処理する。EQ のプラグインは、ここでは上記UAD-2 のプラグインの一つであるNeve 1081 を使用している。

これで、超低域を絞ると共に、キックのアタックのあたりのゲインを上げる。だいたい2kHz~3kHz の間くらいだと思っている。また、キックの低音成分を若干持ち上げる。50Hz~60Hz あたり、500Hz~600Hz あたり。こんな感じになる。

Kick (VOG + EQ)

これで、2MIX 段階でのキックの音作りは、いちおう、終了である。

Kick (VOG + EQ) 時の画面はこんな感じ。

f:id:PSYDOLL:20190421044347p:plain

キックのアタックは、最後のマスタリング課程において、他の音とも兼ね合いを見ながら、さらに増強されることになる。

次はスネア編。

 

 

NATIVE INSTRUMENTS ネイティブインストゥルメンツ/KOMPLETE 12

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